銘木工芸 山匠 インタビュー
美山で50年以上木工製品を製作
美山町静原にある「銘木工芸 山匠(やましょう)」は、オーナーの馳平(はせひら)さんが20歳のころに創業した木工製品の工房。50年以上、大型家具を中心にカトラリーなど小物などを製作しています。
長年寝かせた木材で製品づくり
山匠のこだわりは、長年乾燥させた木材で製品をつくること。一般的には数年乾かせた後に製品にすることが多いそうですが、乾燥期間が短いと使っているうちにソリや割れ、狂いが出やすくなります。ですが山匠は最低でも20年は寝かせるので、ソリや割れといったトラブルはほとんどありません。
特に大型家具は、経年劣化による不具合が少ないといいます。何十年も使える上修理もしてもらえるので、一生モノとしてつきあっていけます。
倉庫には出番を待つ木材がずらりと並びます。「これは40年以上前のやつやで」馳平さんは木をいとしそうに触りながら、説明してくださいました。
細かな工夫や緻密な計算から作られる、美しい製品の数々
店内やショールームでは、大小さまざまな製品を販売しています。どれも美しくて手触りなめらかで、細かく複雑な木目を生かしたものもあります。売れ筋はカトラリーやマグカップなど。見た目より軽く使い勝手がよく、水に濡れても大丈夫で日常使いができます。
弁当箱は3種類の木を重ねて作られます。八角形のものは辺と辺とのつなぎめに芯を入れ、強度を高めています。なめらかですっきりとした外観からは、そんな苦労があるようには見えません。
お香メーカー「松栄堂」の依頼で製作した「塗香入れ」は、ふたを開けて振ると適量のお香が出る製品。松栄堂では以前から塗香入れを販売していましたが、バッグの中でお香がこぼれにくいものを、との要望で着手しました。
木工製品で作るのが難しいとされる「ねじ込み式」を採用、ふたに細い棒をつけお香がこぼれないようになど、随所に工夫が施されています。何度も試作を重ね完成した逸品です。
※塗香入れは、山匠と松栄堂のみで販売されています。
スリムな小物入れは、タテ置きにもヨコ置きにも使えるすぐれもの。引き出しの入れ方を変えることで、タテヨコどちらでも使えるよう工夫されています。引き出しの寸法が1ミリでも狂うと両使いできないそうで、緻密な計算に裏打ちされたこだわりが垣間見えます。
時代や生活環境の変化で…
最盛期は百貨店の催事に多数出店。これまで6000人以上のお客さまとやりとりしてきましたが、時代や生活環境の変化で家具の売れ行きは右肩下がり。近年の売上はカトラリーや小型家具が中心で、「今は大型家具は売れませんねん」と馳平さんは嘆きます。
しかし遠くから訪ねるお客さまがおられ、根強いファンがいらっしゃるのも事実。売れ方は変化しましたが「自分にしかできないもの」を作り続けるのは、今も昔も変わらず。仕上がりの美しさを追求し、木製が難しいと言われる製品に挑戦することを大事にしています。
当店おすすめ銘木箸
銘木箸は約40種類の木材から作られていますが、当店では厳選して6種類<楓・栗・欅・紅紫檀・黒檀・黒柿>を販売しています。
どの木材も固くて丈夫で垂直といった共通する特徴があり、割れにくく曲がりにくいのだそう。銘木箸も他製品同様、3日おきに漆を塗ること8回、約1ヶ月かけて完成させます。どれも手なじみがよく軽くて持ちやすく、先が細いので細かな食材をはさみやすそうです。
自然素材のため、木目や艶など風合いが異なりますが、それも銘木箸のよさ。一期一会の出会いを楽しんでください。自分へのご褒美にしてもよし、シックな黒箱に入るので、お祝いなどのプレゼントにもおすすめです。
銘木箸を通して、馳平さんの細やかな仕事ぶりやこだわりや想いを感じていただけたらうれしいです。