おおつかゆいさんの織物
繊細で複雑な色合いの、おおつかゆいさんの織物。
ストールやポーチなど、日常で使える小物を主に作っておられます。
どうやってこの作品が産まれてくるか、工房を訪ねました。
繭から糸、糸から布へ…
京丹波町にある、ゆいさんの工房。ご自宅の一部屋を工房にされていて、お母様が育てているという季節の花々が出迎えてくれました。
織り機に、糸をまとめる整経機、最近染めたという糸や、染めるために集めている自然の材料などが置かれていました。
昔から、織物に興味があったというゆいさん。
なんとそれは、絵本を読んでいたころにもうはじまっていました。「たぶん『鶴の恩返し』が、はじまりだと思う。」とのこと。
鶴が自分の羽根で美しい織物を織る…不思議なお話ですよね。
鶴のようにボロボロにはなりませんが、織物は気の長い、細かい仕事のうえに完成します。
糸を染め、織り、作品に…すべての工程を、ゆいさんは一人で行っています。
京都の美術高校で染織(主に染め)を勉強され、その後、養蚕業の盛んな町、愛媛県の野村町にて修行されました。新聞を見て応募されたという行動力!繭から糸をひくところから、糸を作って染めて、着尺(着物にできる大きさの反物。約13メートル)を織る勉強をしたとのこと。
「繭は40キロくらいひいたかな~」と穏やかに仰られます。びっくり。
蚕を育てたこともあるそう。蚕は春と秋に育てるシーズンがあり、季節によって仕上がる質が違うそう。蚕の餌となる桑の葉を、一日中準備しなければならない時もあるそうです。虫はあまり得意ではないそうですが、蚕はとてもかわいい!と、盛り上がっていました。(育ててみることをおすすめされました。なやむ。)
あるものを生かして、染めて、織る
自分で糸をひくこともしたけれど、最近は、あるものを活かしたい、と、廃業された糸やさんからひきとった糸や布も使われています。
端切れを細く糸状にして織り直す「裂き織り」もされています。ざっくりした風合いになりがちな技法ですが、ゆいさんの手にかかれば、とても繊細な織物に。ハギレにハサミを一定間隔に入れて、ほとんど糸のように準備されています。
染める仕事も、あるものを生かして。
このピンクの布。何から染まったかわかりますか?
なんと、アボガドの皮からとれた色だそうです!
勉強をはじめたのがシルク(絹糸)からだったので、シルクがメインだけれど、木綿などでも機会があれば作ってみたいとのこと。
興味は尽きません。
どんな色が出てくるか!?
絡んだ糸をほどくのも好きだそう。子育てなどで織るのが難しい期間も、織物の教室から、絡んだ糸をほどくのを頼まれてやっていたくらいだそうです。
そんな中でも、一番好きな工程だというのは、綜絖通し。何百本とある経糸を、順番に針金にあいている穴に通していく工程で、経糸を規則正しく上げ下げして横糸を織り込んでいくのに必要不可欠。大変細かい作業です。
工房の中には、難しそうな洋書も。ですがゆいさんはとても楽しそう。
本を見ながら、組織(織り方)を色々試してみるのが好きだそう。
どんなものを作るか、設計してから取り組むよりも、色と組織の組み合わせだけ考えて織りだすのが、ゆいさんの最近の作り方だそうです。
仕上がりをイメージして絵を描くことはせず、色の組み合わせを、実際に並べてみて考え、挑戦されているのだとか。
実物をみると、色糸が複雑に組み合わさり、写真ではなかなかわからない色合いになっていたり、金の細い糸がキラッと一本入っているのを発見したり…
宝探しのように、一点一点違います。
お気に入りをぜひ、探してみてください。